先日、何人かのライターさんに対して、自分でオウンドメディアを持つための基礎知識をレクチャーする機会がありました。
その中からSEOに関わる基本の部分をピックアップして掲載します。
1)ストック記事とは
効果を最大限にするために、自社で作ろうとしているコンテンツが、「ストック記事」中心か、「フロー記事」中心かという設計をしておきます。
ニュース記事のようにスピードが重要な記事が「フロー記事」で、書籍のように消費期限が長めの記事が「ストック記事」と呼ばれています。ウェブ上では、これら違った性格の記事が混在していますが、それぞれ効果を最大化するための施策は違います。
出版と同じことで、新聞であれば発行部数は最大になりますが、賞味期限は短く、制作に資金とリソースが必要となるのが一般的です。ただし、個人や小規模な組織でも1日3-4記事アップができるような能力やジャンル特性のものなら、かえって狙い目の場合もあります。
玉子か先か鶏が先かなので、どこを機軸に選んでもいいですし、中間でも、いくつかのタイプの記事を織り交ぜていく戦略もあります。
2)ストック記事の場合のGOOGLE検索の特徴:動的か静的か
例えば、飲食サイトで、お店を探しているユーザーに対しては、「エリア×ジャンル」という2語のKWがもっとも効果的だとされます。
店舗の紹介記事を多数持っている場合、タグなどで動的なリストができるので、それで十分なのでは?と思う方もいるかもしれませんが、スタートアップの場合、SEO的には、静的の記事を制作した方がベターだと考えています(動的リストはno indexに)。
これはGoogleの検索順位のアルゴリズムの特徴によります。
右のように「代々木上原×フレンチ」というKWで検索した場合のように、検索1ページ目に表示される記事は、動的なリストが中心ですが、静的なリスト記事が3~5つくらい入ってくるのが一般的です。
なおかつ、動的リストの媒体を見た場合、「食べログ」「レッティ」「ヒトサラ」「一休」と大手に占められている一方、静的の記事は「プレシャス」「ちくわ」という記事メディアや個店のサイトです。
動的リスト枠で大手に対抗していくより、この静的記事の枠を狙っていくほうが、難易度は低めです。
この枠でも、東京だと企業のメディアが、それなりに多いのですが、大阪でさえ、かなり隙間は残っています。
名古屋や福岡、さらに地方であれば、この静的枠は狙い目です。
まとめ記事は粗悪か
紙媒体を経験しているキャリアのあるライターの方からは、かつての「ウェルク問題」などを引き合いに、「まとめ記事、キュレーションサイトって、どうなんですか?」という話は、よく聞かれます。
けれども、それは論点が違うと考えた方が、賢明です。
週刊誌にも『週刊文春』から『週刊実話』まであるように、制作方針からくるモラルとクオリティが問題で、記事の形式の問題ではないのです。
加えるなら、検索プラットフォーム側のテクノロジーの進展の問題です。
例えば、紙媒体でも、旅行系の雑誌で、特集をした場合、あるテーマのもとに10件とか個別のネタを集めますよね?
キュレーション記事も、根本的には、それと同じ構造です。
Google自体も、順位評価に「E-A-T」(右枠)の比重を高くしているように、キュレーション記事のフォーマットのなかで、信頼性の高いセレクト、専門性の高いテキストを積み重ね、権威性を増していく方向が、現在は王道のやり方です。
ただし、解析に関するAIテクノロジーの変化は日進月歩なので、Googleの方針に、現実が付いてきていないことも多いのですが、中長期的な方向は明らかにこちらです。
3)ストック記事の増やし方(まとめページと個別ページの関連)
webの場合、類似するテーマを、かたまりで考えていったほうが、効果が上がる傾向にあります。
例えば、映画のサイトを立ち上げたとします。
マーティン・スコセッシが好きで、過去の作品レビューページをいくつか作りました。
3~5作品くらいのレビューページを作ったら、前項目のように、まとめページを作りましょう。感覚的には、少し詳しめなインデックスページだと思えばいいです。
そうすると、多くの場合、個別のページより、このまとめページの方がPVは高くなります。これはユーザーが、個々の作品名を探すより、スコセッシの作品を探す需要のほうが高いからです。
そして、このブロックがあることで、検索サービスからは、スコセッシ作品に関しては、体系的なコンテンツを持っている≒専門性が高いという認識をされ、全体的に評価が上がっていきます。
品質が保たれていれば、個別のレビューページの検索順位も徐々に上がっていくでしょうし、スコセッシの最新作に関してページを追加した場合も、これまでよりも高い順位からスタートできるようになっていきます。
この構造は、書評でも、グルメでも、ホテルでも、観光スポットでも、多くのジャンルで同じことが言えます。
スコセッシの作品に関するページのかたまりは作りました。
次にやることは、類似する監督(ファンがカブると考えてもいいでしょう)に関しても、おなじようなコンテンツのかたまりを作っていくことです。
このブロックが積み重なっていくことで、Googleからはハリウッドの映画作品に関しては、充実した内容のサイトだという認識が高まっていきます。
さらに、フランス映画、アジア映画、日本映画と積み重ねていけば、総合映画サイトとなっていきます。
Googleの検索に効果的だという説明をしてきましたが、これも雑誌や書籍のブランディング、編集方針策定と、さほど変わらないと思います。
どこまで個別記事が必要か
たとえば、10選というまとめ記事があるなら、その配下に10の個別記事があるのが理想ですが、3つでも5つでも構いません。ないよりはマシです。
逆に言えば、1つしか個別記事がなくても、まとめ記事を書けるなら10選の記事にしておいた方が有利です。
キュレーションサイトなどは、配下の個別記事をまったくもたないケースも多くありますが、持っているサイトより、評価は低くなります。
ですので、横の展開量を増やすこと(☞次項)で、パフォーマンスを担保していく手法を取っていると言えます。
下から攻めるか、上から攻めるか:ページをつくる順番に関して
リアルなビジネスに関しても同じですが、0→1で立ち上げる場合、競合の少ないところで評価を高め、徐々に広げていくのが正攻法です。それを、エリア戦略として捉えるか、コンセプト戦略として捉えるかなど違いはあります。
サイト運営も同様の構造を持っていて、右図のロングテールの側から押さえて、徐々にビックキーワードに広げていくのが定石です。その順番で制作していくのが、もっとも早く効果がでるケースが多いのも確かです。
一方で、私自身は、とくに個人や少人数でやる場合は、多少行ったり来たりしてもいいのかな?と考えています。「今、これを書きたい」というネタがあるのなら、そのモチベーションを優先させたほうが、中長期では結果が出やすいと思います。
ただし、本文で説明したような構造をつくるのがゴールだということを忘れずれに、どこかの段階で足りないピースを埋めていくという意識は忘れずにいることがマストです。
4)Hタグとは
記事の構成を考える際、重要となるのが、Hタグです。
「Headline」の略ですので、見出しのことになります。
H1~H6くらいまであるのが一般的ですが、原則的な考え方は、雑誌などとも同じで、
- H1:大見出し
- H2:中見出し
- H3:小見出し
と考えておけば、大きな間違いはありません。
(※Googleは、H3以下はほとんど見ていないという説が数年前から一般的ですので、念のため、H3まで使うのをデフォルトにしておけば大丈夫でしょう)
雑誌でも、記事の重要な要素から大見出し→中見出し→小見出しと階層を付けていき、見出しをざっと見ただけで記事の内容を把握させるのが基本だと思います。
同じように、webページでも、検索サービスのクローラー(ロボット)が、ページの内容を把握しやすくするために、適切な階層構造をつくる必要があります。
ですので、H3の配下にH2が来ることがないのはもちろん、H1の下に飛ばしてH3が来るのも不適切です。
5)タイトル(H1)でのKWの役割・使い方
タイトルに使うKWを説明する前に、前項のHタグとも関連するクイズを1つ出しておきます。
次の①は「食べログ」の店舗ページ、 ②は同じく「食べログ」のリストページですが、大見出しにあたるH1は、どの部分でしょうか?
前項の答えは、赤枠で囲ったテキストになります。②に関しては、おそらく多くの方がわかったと思います。一番目立つ「見出し」感を、デザイン的にも出しています。
ただし、①のH1がわかった方は、既に相当SEOに精通している方、あるいは直感的に理解できている方だと思います。
これが何を表しているかというと、店舗ページにおける、重要なKWは
- 店名+ふりがな(or英文表記)
- エリア
- ジャンル
ということです。
「食べログ」が、どうしてこういうデザインになったのかまではわかりませんが、デザイン的に最も目立つ店名などよりも、上記の3つの文字要素が揃っていることのほうが重要だということです。
同じように、②に関して、補足しておくと、このタイトルは文章になっていません。
それでも、「広尾+イタリアン」で検索すると、1位で表示されます。
きれいな文章よりも、適切なKWが入っていることが重要だということです。
6)Hタグの構成のし方
ページを検索サイトに認識させる要素の重要度は、下記のように考えておけば大丈夫です。
これも、雑誌のタイトル構造と同じです。
- H1:大見出し
- ディスクリプション:リード文
- H2:中見出し
では、具体的な例を見ていきましょう。
<まとめ記事の例>
・H1に「エリア+ジャンル」
・ディスクリプションに記事内容の説明と独自性について
・H2に「施設名(+小エリア)」
たとえば、 「バンコクの観光ガイド」という記事を書く際を考えます。
H1に「バンコク+観光ガイド」という大テーマを示し、H2に「王宮」「シーロム」「スクンビット」「リバーサイド」とエリアを入れたり、「観光スポット」「ホテル」「レストラン」とジャンルを入れたりします。
クローラーロボットは、H1で何を紹介しているページか把握し、H2でそのテーマに対する網羅性を把握、さらにテキストのボリューム(☞⑥)などで、ページがどれだけ充実しているかを把握していくと考えればいいと思います。
<施設・店舗ページの例>
個別の施設ページに関しては、前項で見たように、H1に必要なKWは「店名(ふりがな)+エリア+ジャンル」になります。
さて、H2が問題です。
結論から言うと、「見どころ」や「名物」、「地図/アクセス」、「予約」などという項目になっていくのですが、やってきた媒体によっては、こういったワードは、ショルダー的な扱いで、見出しか?と思う人もいるかもしれません。
けれども、あくまでHタグは、機械が読み取るものですので、抽象的な言い回しは、正確に読み取ってもらえないリスクがあります。
場合によっては、前項の食べログのH1タグのように、デザイン的には大見出しではないけれども、タグはH1というやり方もあるかもしれません。
気の利いたキャッチコピーは不必要?
とくに店舗・施設ページでは、優先度は落ちます。
検索を機軸に考えた場合、何らかの課題を解決するために検索します。
課題解決と書くと、難しく考えがちですが、例えば、「東京のペニンシュラってどんなホテルだろう?」と思った方のほとんどは、最初に 「東京 ペニンシュラホテル」と検索するはずです。
あるレストランを探している場合、前項のように、店名、エリア、ジャンルから自分が思い浮かぶワードを入れて、探していく方がほとんどだということです。
SEO的には、そういったKWが的確にタイトルに入っていれば、気の利いたキャッチコピーになっていなくても、ある程度の結果は残せます。
ただし、同じようなタイトルが検索ページが並んでしまう可能性も高いので、その際に、必要なKW+最小限のワードで独自性を出す必要はあります。
タイトルの後ろに「○○|Foodies Asia」とサイト名を入れるケースもありますが、これも差別化を図る一つの方法です。
また、タイトルの下に表示されるディスクリプションで、自らの記事の独自性の部分を強調して伝えることを心がけます。
7)1記事あたりの文字数について
Webの記事は、
1記事に必要な文字量は、3,000~5,000Wがメド
と、一般的によく言われます。
これはどういうことかと言うと、右の項目で言えば、「質・量ともに十分であること」というのが、検索順位に大きく影響しているとされるからです。
ただし、検索順位は相対的なものですので、同じKWに対して、競合サイトが記事を作っているか、どのような質の記事かによります。
ですので、500字くらいの記事で、検索上位を取れることもあれば、5,000字以上書いても、1ページ目に入らないこともあります。
また、字数は、2,000字くらいで大丈夫だという考え方もありますが、これも相対的なコンディションによります。
なので、結局はやってみないとわからないということになりますので、自分が手掛けるサイトで、文字数を変えた記事で、A/Bテストを行ってみて、必要な文字数の基準をつかんでいくしかありません。
また、ECサイトの場合は、記事の量、読了率よりも、迷わず早く購入できたかという指標が優勢だとされるので、考え方が異なります。
高品質とされるページの条件
・ページの目的がしっかり達成できること(情報を提供する、物を購入する、楽しませるなど)
・(時代遅れの情報とならないように)定期的に更新される
・編集ポリシーが公開されている(特にニュースサイトの場合)
・質と量ともに十分であること
・メインコンテンツをわかりやすく言い表したタイトルがつけられている
・E-A-Tが高いこと
・専門家によって作成される(分野によっては信頼できる経験者でも可)
・ウェブサイト情報が十分であること
∟特にYMYLページでは、コンテンツの責任者に関する情報が明確である
∟ショッピングや取引を行うページでは、カスタマーサービス情報があること
ほか
FAQ:1記事あたりの文字数の基準に関して
Q)長すぎると読まないんじゃないか?
確かにその通りです。原則的には、内容を充実さえ、面白く、さらに視覚的に見やすくする(☞⑦)など、読ませる努力をするのは前提として、ある程度割り切るなら、次の2つの対処法があると思います。
①強弱をつけ、重要なものは前に持ってくる
これをどう捉えるかというと、例えば、「○○10選」という記事であれば、セレクトは真剣にやった上で(H2の精度に関わります)、最初の3~5枠に注力することにもなります。
個人的な推しのものでも、コンバージョン率でも、サイトのコンセプトによって、重要なものを前半に持ってきて、勝負を決めてしまうというのも手です。
右図のGoogleのクリック率の統計のように、ユーザーの行動は、上位3位で4分3くらいのクリック率を占めることになります。
残りの部分は、実質的に下支えという役割になりますが、これがあることによって、 SEOとしては、ページ自体の評価が高くなる、そして25%は需要があるということです。
②流し読みをするユーザーが多いことを意識しておく
これに対しては、重要なこと(タイトルに設定したKWに対する答え)は、言葉を変え、何度か繰り返すという対応のし方があります。
この場合は、全体で起承転結という構成ではなく、起承転結を小パートごとに4~5個繰り返すという構成にしておくと、やりやすいと思います。
検索順位とクリック率の調査例
Backlinkoが2019年に500万件のGoogle検索結果を分析した結果、1位のクリック率は約32%、2位は25%、3位は約19%に。
8)スマホ(モバイル)ファーストなUIについて
現在、webページを見るデバイスは、ざっくりと考えると、「スマホ:PC=8:2」くらいが平均とされています。
ですので、スマホでの見え方が、優先されるのが原則です。デザイン的な要素はいったん置いておくとして、ライティングにもっとも関わるのは、フォントサイズと改行です。
例えば、右のPCページは、長年紙媒体で活躍していたライターの方からすれば、改行が多すぎて、すかっとした間抜けな印象を受けるかもしれません。
けれども、スマホのページでは、おおよそ程よいバランスに見えると思います。これをブロック丸ごと改行しなかったら、スマホ画面一面が文字で埋まってしまいます。
また、当たり前のことですが、フォントが小さすぎると、スマホでは、より読みにくくなります。
9)効果検証のツール
はい、ある程度のサイトはできました。
では、次にやるのは、効果検証です。データサイエンティストという専門職があるように、突き詰めていけばどこまでも高度にできますが、ベーシックなところだけでも把握できるようにしておいた方がいいと思います。
効果検証に使う最低限のおすすめツールは、以下の3つです。
- Google Analytics
- Search Console
- GRC
1.「Google Analytics」では、ページごとにPVやセッション数が確認できるほか、ユーザー像を詳しく分析するうえで必要なツールが揃っています。
2.「Search Console 」では、サイトの検索トラフィックや掲載順位を測定できるほか、問題点を把握することができます。
この2つは、Googleのサービスで、Gmailを持っていれば(新規作成すれば)、無料で登録・利用ができます。
3.「GRC」は、キーワードに対して、Googleやヤフーなどの検索順位を見える化するツールです。
>> 全てのウェブマスター必携。検索順位チェックツールGRC
各ツールの使い方のポイント
1.Google Analytics
PVなどは、上下しながら、進んでいきます。日々の動きに、一喜一憂せずに、大きな流れとして、右肩上がりになっているかを確認していきます。
2.Search Console
どんなKWで検索されているかを知ることができることができるのですが、CTR(クリック率)がわかるので、問題点の改善にも役立ちます。
また、Googleへのインデックスできる機能は、マストです。
3.GRC
個人的には、もっとも重要視している指標です。
とくに数字狙いでコンテンツを決めるわけではなく、書きたいこと、伝えたいことありきの場合、PVがどれだけあるかより、そのテーマを扱う記事のなかで、どの位置にいるかを競合と相対的に捉えることができます。
10)SEOの視点からみるドメインとサーバー
もし、自分でwebメディアを立ち上げようとするなら、独自ドメインを取得し、レンタルサーバーと契約することをおすすめします。
これは、SEOとして有利だからです。
手間がかかって難しそうだと、無料のブログサービスでいいんじゃない?と思う方もいるかもしれません。
最近では広告を貼れ、収益化できる無料ブログサービスも出てきました。
けれども、無料ブログでは、Googleの検索ページに表示されるのは、非常に難しくなります。
無料ブログの場合、サブドメインというURLの形式になることが多いのですが(右枠)、そのブログのユーザーのページがすべて、1つのドメイン内のコンテンツということになります。
気を付けたいのは、Googleは、同じドメイン内で、同じKWの記事を2つ載せるのは非常に稀なことです。
例えば、アメーバを使って、『俺のフレンチ』の紹介記事を書いたとしたら、Googleの検索で引っ掛かるのは、アメーバのなかから1記事のみです。アメーバを使っているほかのユーザーすべてとの競争に勝つというハードルを、まず越えなければならないわけです。
「note」も、構造的には同じです。
SNSなどからの導線で、見てもらえる人を増やせる人ならいいとい思いますし、サービスを利用している人たちのなかで関心が高まればバズりやすい傾向はあります。
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