ルーフバルコニーに、ぶどう棚を造ろうと思い、側を造り、プランターを購入しましたが、本題は、どのぶどうを育てるか?です。
「巨峰」や「ピオーネ」などの生食用の人気品種も捨てがたいのですが、どうせならもっと面白いものをやってみたい。
そう考えたときに思いついたのが、日本ワインを生み出すブドウでした。
どんな品種があるのか、一般人にも苗木は入手可能なのかを調べてみました。
日本ワインに使われる日本固有のブドウ品種
ワインに使われる日本固有品種にブドウは、主に次の3種類とされています。
赤は「マスカット・ベーリーA」「ブラッククイーン」、白は「甲州」です。
もう一つ、ワイン専用ではありませんが、日本古来の野生種「山ブドウ」も使われることもあります。
これらを生産して生業を立てている農家さんもいますので、プロ向けのナースリーで苗は入手可能でしょうが、一般でも入手できないわけではなさそうです。
マスカット・ベーリーA<苗あり>
「マスカット・ベーリーA」は、 “日本ワインの父”と呼ばれる川上善兵衛により、品種改良でつくられたもので、赤の日本ワインではもっとよく使われている品種です。
私自身、この品種を意識しだしたのは、素晴らしく個性的なBeau Paysage(ボーペイサージュ)のワインに出会ったことでした。
フランスやイタリアなどヨーロッパ系のワイン・ヒエラルキーのなかでは捉えられない、けれども、素晴らしい個性に満ちた風味に衝撃を受けたものでした。
ボーペイサージュのボトルは、現在、とてつもなくレアものになってしまっていますが、同じマスカットベリーAを使ったワインで、秀逸なビンテージは、ほかのワイナリーからも出ています。
「タケダ ワイナリー ルージュ 樽熟成」
「シャトー酒折 マスカットベリーA樽熟成」
多くのワインが「マスカットベリーA」から作られているように、通販であれば、苗木も、比較的容易に入手できます。
ブラッククイーン<苗あり>
「ブラッククイーン」も 、川上善兵衛が品種改良でつくったものです。
イチゴやプラム、ブラックベリーのような果実のアロマをもっているものの、酸味が強めなので、ブレンドしてワインに醸造されることが多い品種でしたが、最近では単独で豊かな風味を生かしたワイナリーも増えてきています。
まずは、山形のタケダ・ワイナリー。
上山市産のブラッククィーンを使用しています。
ブラッククイーンを使ったスパークリングワインも、長野のアルプスワインから出ています。
比較的マニアックな品種なので、苗木はないかと思ったら、楽天に出ていました。
ヤマブドウ<苗あり>
古来より日本の野山に自生している品種。
このヤマブドウにワイン専用種を交配させて、数々の日本特有ワイン用品種が誕生しています。
私が、ヤマブドウのワインに感銘を受けたのは、2000年ごろ、北海道・池田町の十勝ワインでつくられていた「アムレンシス」というボトルに出会ったことでした。
野趣はあります。けれども、それにまったく嫌な感じがしない不思議なテイストに魅了されたのですが、ほどなく原料不足になり、「アムレンシス」は廃番になってしまいました(その後、微妙に品種を変え復活)。
そうか、ヤマブドウ自体が不足しているんだ?と認識していたのですが、その後、「ヤマソーヴィニヨン」などヤマブドウと交配された品種から始まり、ヤマブドウ単体でも、スモールワイナリーから徐々にビンテージがリリースされるようになってきました。
現在、ヤマブドウ100%で安定的にリリースされているのは、「小坂七滝ワイナリー 岩木山ぶどう」でしょうか。
ぶどうジュースやジャムなどを手軽に作れ、独特な旨さを持つヤマブドウですので、苗木は、比較的豊富に販売されています。
甲州<苗あり>
日本産のブドウで、白ワインに使われる代表的な品種は、この「甲州」です。
甲州のワインに関しては、絶対に「シュールリー」に限ると思っています。
製法の話で、フランス語で「Sur(上に) Lie(澱)」 、つまり、澱引きをせず、そのまま春までおいておくという醸造方法なのですが、爽やかながらもクリーミーで深みがあり、複雑でありながらほんのり旨味を感じる味わいが絶妙です。
その代表格が、丸藤葡萄酒の「ルバイヤート 甲州シュール・リー」。
食べてもそこそこ美味しいので、苗木も出ています。
ぶどうジュースをシュールリーで作れないかと思ったのですが、この製法は、管理が大変で手間がかかりのでギブアップです。
素直にワインを買うことにします。
善光寺
長野県で古くから栽培されている白ワイン用ブドウ。
日本の高温多湿の気候風土に適していて、紫紅色で大粒種であることが特徴です。
中国原産の竜眼種と同じとされます。
日本ワインに使われるヤマブドウ系の交配種
意外でしたが、日本でワイン用に交配された品種の多くは、ヤマブドウとの交配種でした。
ヤマ・ソーヴィニヨン<苗あり>
山梨大学の山川祥秀氏が、1990年に作り出した赤ワイン用の品種。
県内に自生していたヤマブドウとカベルネ・ソーヴィニヨン種の交配種で、小粒で紫黒色なのが特徴です。
このヤマ・ソーヴィニヨンの特徴をもっとも生かしたワインは、山形の月山ワインの「月山ワイン ソレイユ・ルバン ヤマソービニオン」だと思います。
時折、苗木を持っている業者や個人の方が、ヤフオクなどに出品しているのを見かけます。
IK-553
前出の十勝ワイン「アムレンシス」ですが、山ブドウのワインとして造られていたのは2002年ビンテージまで。
けれども、人気の高い銘柄だったということか、その後復活しています。
ただし、純粋ヤマブドウではなく、池田町ブドウ・ブドウ酒研究所が、「セイベル13053」と「山ブドウ」の交配品種として作られた独自品種「IK-553」が使われています。
十勝ワインが、自社のワインのためにつくった品種ですので、苗木が出回ることはめったにないと思われます。
山幸
十勝ワインで使われる独自品種。
父親は山ブドウで、母親は池田町のオリジナルブドウ品種の清見種で、耐寒性に優れ池田町の厳寒期であるマイナス25度以下という環境でも枯れない耐寒性を備えています。
清舞
「山幸」と同じく、この「清舞(きよまい)」も、清見種と山ブドウのアムレンシス亜系の山ブドウを掛け合わせた耐寒性交配品種です。
ただ、その個性はことなり、母親の「清舞」似で爽やかな酸味に繊細な風味が特徴です。
ワイングランド
帯広郊外に自生していた「中島1号」とモスクワから入手したヤマブドウの種を交配した品種に、さらにセイベル13053を掛け合わせた赤ワイン用の品種です。
アクセントとしてブレンドして使われることが多い印象でしたが、ワイングランドのみで醸造されたワインも出てきたようです。
未飲なので、近々試してみようと思います。
日本ワインに使われるその他の交配種
日本の固有品種である「ブラック・クイーン」や「甲州」などに、欧州品種をかけあわせた交配種もいろいろあります。
最近ではなかなかワイン化されない品種も、情報のみ載せておきます。
甲斐ノワール<苗あり>
1969年に山梨県果樹試験場でブラック・クイーン種とカベルネ・ソーヴィニョン種を交配して作られた品種。
色調の濃いワインになります。
意外や、苗も出ていました。
甲斐ブラン
甲斐ノワールの白ワイン用バージョンと言えばいいでしょうか。
1992年に山梨県果樹試験場で甲州種とピノ・ブラン種を交配して作られた白ワイン用ブドウで、酸のしっかりしたフルーティーなワインとなります。
シャルドネ・ドゥ・コライユ
日本の白ワインの代表「甲州」と、日本の白ワインの代表「シャルドネ」の交配種。
マンズワイン独自の品種で、1982年に登録されています。
このぶどうで造るワインは、フレッシュなアロマとさわやかな酸味が特徴です。
浅間メルロー
2002年に登録された新しい品種。
そもそもは、シャルドネと龍眼(善光寺)の交配により1984年に登録された独自品種の「浅間」に、さらにメルローと交配することにより誕生した品種です。
濃い色、スパイシーな香り、快い渋みを持ったワインとなります。
成長観察記
1年生の苗を植えて、半年が経った9月下旬の姿。
土や日照を含めて、育て方もあるかもしれませんが、種によって、棚になりかけているもの(山ぶどう、ブラッククイーン、ヤマソービニヨン、甲斐ノワール)と、まだ半分~2/3の高さまでしか育っていないもの(マスカットベリーA、甲州)に分かれています。
純粋な日本種のマスカットベリーA、甲州のほうが発育が遅い傾向があるのでしょうか。
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